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大阪地方裁判所 昭和44年(借チ)29号・昭44年(借チ)35号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕 一、申立人所有の別紙目録記載の建物を金一八三、四〇〇円、別紙目録記載の土地の賃借権を金一、二五〇、〇〇〇円で相手方に譲渡する。

二、申立人は相手方から金一、四三三、四〇〇円の支払を受けるのと引換に相手方に対し、右建物及び土地を引渡し、かつ、建物の所有権移登転記手続をせよ。

三、相手方は申立人から右建物及び土地の引渡を受け、かつ、建物の所有権移転登記手続を受けるのと引換に申立人に対し金一、四三三、四〇〇円を支払え。

〔決定理由〕本件は、申立人が借地法第九条の二第一項により件外武内貫蔵に対し別紙目録記載の土地の賃借権(以下本件賃借権という。)を譲渡することの許可の裁判を求めた(昭和四四年借(チ)第二九号)のに対して、相手方が同法同条第三項の建物等の優先譲受権を行使し、申立人所有の別紙目録記載の建物(以下本件建物という。)及び本件賃借権の譲受を求めるというにある。

そこで考えてみるに、本件の前提条件である申立人、相手方間に土地賃貸借契約の存在が認められるならば、裁判所は賃貸人である相手方の建物等の優先譲受の申立に基づき、相手方に対し、申立人所有の本件建物及び本件賃借権を譲渡する裁判をなさなければならないところ、本件について調査した資料によると、申立人は昭和二八年七月二二日本件建物及び本件賃借権を株式会社豊崎伸銅所から譲受けたこと、申立人が譲受けた右賃借権は相手方の先代多賀喜七が同一八年九月二日頃申立外藤本周治との間で、本件土地につき、非堅固な建物の所有を目的とし、存続期間の定めのない土地賃貸借契約(契約書は存在せず、賃料額は不明)を締結したことにより生じたものを第四番目の賃借人として承継したものであること、相手方は昭和三五年二月八日右先代を相続し、その賃貸人たる地位を承継したこと、借賃は同二八年七月分より一カ月金三六〇円(3.3平方米当り金一八円)、同三九年頃からは一カ月金六〇〇円(3.3平方米当り金三〇円)となり、現在は一カ月金八〇〇円(3.3平方米当り金四〇円)となつていることがそれぞれ認められる。

そこで、次に相手方に譲渡すべき建物の対価及び賃貸人である相手方において賃借権の譲受をする場合の賃借権の対価について検討する。

申立書添付の図面によると、本件建物及び土地は京阪電鉄守口駅の北北西、国道一号線に至る中程に存し、近隣には三洋電気株式会社、松下病院、松下寮、日吉公園、幼稚園等が存し、大阪市の中心地への交通にも利便の地であることが認められる。

申立人は本件建物及び本件賃借権の価額はわからないが、鑑定委員会の鑑定意見に基づき、決定をして貰いたい旨述べ、相手方は、当初、本件建物及び本件賃借権の譲渡を受けるときは、金五〇〇、〇〇〇円位で譲受けたい。本件土地は一般的には3.3平方米当り金一〇〇、〇〇〇円以上するところである。と述べ、鑑定委員会の意見に対し、借地権割合五〇パーセントについて、一般的に異議はないが、本件の場合、借地権の残存期間があと僅かであること、本件家屋は朽廃に近く、使用継続が不可能に近いこと、本件建物は申立人が他に賃貸していたが現在は空屋になつていること、等に鑑み、借地権割合をもう少し少い目に見て相手方に有利に判定されるべきであると述べた。

本件についての鑑定委員会の意見は、本件建物の価額について復成式評価法によりその復成価格を金九一七、〇〇〇円とし、それに物理的、機能的、経済的減価を考慮してその復成現価を金一八三、四〇〇円と判定し、本件賃借権価額について、その土地の更地価額を金二、八〇〇、〇〇〇円と評価し、その五割を借地権価額と考えて金一、四〇〇、〇〇〇円と判定している。

これら建物の価額及び土地賃借権の価額についての鑑定委員会の意見は、その基礎となつた事実関係がおおむね前示認定事実にのつとり、殊にその価額評価も客観的基準として妥当するものと認められるので、これを基本として採用することとし、建物の対価を金一八三、四〇〇円と定めることとし、賃貸人である相手方が本件土地賃借権を優先して譲受ける場合の対価としては従前の賃貸借契約における賃貸人、賃借人間の利害の関係、賃貸人が早期に土地の回復を図り得る利益等を考慮して判断すべきところ、

本件においては、前示認定の借賃がその更地価格を投下資本と考えての利廻り計算からみれば低廉に過ぎること、本件建物は申立人の前者株式会社豊崎伸銅所が社宅として使用していたものを同社の社員であつた申立人が譲受け本件賃借権を承継したのであるが、その際賃貸人であつた相手方先代と申立人或いは同社間に経済的給付の授受がなされた形跡の認められないこと、本件賃借権の残存期間が短期間であること、本件建物は右に定めた価額及びその減価をみても明かなように老朽化していること、申立人が本件建物及び本件賃借権を申立外武内貫蔵に譲渡しようとするのは、申立人所有の建物の買換資金を必要としたためであるところ、その譲渡予定価格が金一、六〇〇、〇〇〇円であり、かつ、当初申立人からいわゆる承諾料として少くとも金二〇〇、〇〇〇円の提供を申出た事情から申立人の手元に残る金額は、いずれにしても金一、四〇〇、〇〇〇円前後であつたこと等当事者間の主観的事情も加えた諸般の事情を考慮すれば、賃貸人である相手方が本件土地の賃借権を譲受る場合の対価は前示鑑定委員会の意見に基づく借地権価額から、その一割強に相当する金額一五〇、〇〇〇円を差引いた価額をもつて相当であると考え、これを金一、二五〇、〇〇〇円と定める。

なお、申立人の相手方に対する建物及び賃借土地の引渡並びに建物の所有権移転登記義務と、相手方の申立人に対する建物の対価金一八三、四〇〇円及び土地賃借権の対価金一、二五〇、〇〇〇円の合計金一、四三三、四〇〇円の支払義務とを同時に履行すべきことを命ずることとする。

よつて、主文のとおり決定する。(高木貞一)

目録

守口市金下町二丁目二八番地、二六番地、五七番地、五八番地家屋番号四番一四号

一、木造瓦葺平屋建居宅 三〇、三一平方米(九坪一合七勺)

守口市金下町二丁目二六番地

一、畑(現況宅地)

三八六、七七平方米(一一七坪)のうち

六六、一一平方米(二〇坪)

(別紙図面赤斜線部分)

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